姫とのやり取りから。


私とid:Ririkaさんの、この数日間のやり取りをご覧になっていた方も多いだろう。
本当はこんなもんタネ明かしするのは品がないんだけど、あえて書いてみる(姫、無粋な真似をいたしまして申し訳ありませぬ)。こういうコミュニケート手法もあるんだよ、ということを多くの人に知ってもらうと、いずれ私も楽になるだろうから。


ひどく乱暴に流れだけ言うと、批判、批判に対する批判、批判に対する批判に対する批判…という形になってしまっていた。珍しくないパターンではある。これが続くと、自分が本当に何を言いたかったのかや、そもそも意見のどこが違うのかがわからなくなってしまいがちだし、心がネガティブに傾くと、いいアイデアも湧かなくなってくる。

そして、最終的には決裂するか、決裂しないにしても誰かが「まあまあ」と割って入ったり「いいよもう、俺が悪かったよ」ということになったりして、少なくとも一方が不満を抱え、話としては何の進展もないままに終わることになってしまう。

私はRirikaさんとの対話の結末として、それらの答えのどれも好きになれなかった(だって決裂は嫌だし、他のは無駄骨じゃん)*1。だから最後は批判ではなくネゴシエートすることに意識を集中させた。

id:Ririka:20040530#cの、「要約が的確であればそれでかまわんけど。」から始まるコメントがそれだ。前後も合わせて読んでもらえば、両者が一歩ずつ前進していることを確認してもらえるだろう。私は私の要求を受け入れてもらうことに成功したし、彼女は彼女で何かしら得たものがあったのではなかろうか。何より、ここで関係を切ったらお互いに損だと両者が再認識できた。

こういうふうに「雨降って地固まる」的にネゴシエートできれば、こういう局面では理想的*2。私は結果に満足している。本当は、こういう立ち位置を取ってから話を詰めていったほうが、もっと生産的な議論になるはずだと思うけど、まあそれは別の話だ。



さて、本当に無粋なんだけど、せっかくだからテクニック的なことを少し。


今回の件で、私がRirikaさんに要求したかったのは「批判するならば書き方にもう少し気を遣ってほしい」*3ということだったが、Ririkaさんがどのような文章を書くかということに関して、私は決定的に無力で何の権利もない。

こういうときの交渉事に使える私が知っている方法は、相手に手を渡してしまうこと。誰だって、他人の批判・要求を押し通されて受け入れるよりも、自分自身から器量ある振る舞い方をできるほうが気持ちいいだろうし、顔も立つじゃないか。

しかし、これをするのは恐い。武装を解いて自らの心の内を打ち明けなければならないし(こういうときの嘘は大体ばれる)、「あっ、そう。じゃあ、さよなら」とか言われてしまえばそれまでだからだ。
相手に良心と損得勘定ができる知能があることを信じ*4、損得勘定の結果として切り捨てられないだけの価値が自分にあることを信じなければ、できない。覚悟したよ、実際。



実は、こういう「煮るなり焼くなり切り捨てるなり好きにして」という態度は、何人かの優秀なビジネスパーソンと交渉した経験で身に付けた*5。この態度は、開き直りではあるけれども、決して投げやりではない。

海千山千のビジネスパーソンを相手に、小手先のテクニックなんて何が通じようか。そんなものは全部見透かされてしまう。「相手を動かす心理テクニック」みたいな本を読んだ程度のものでボロを繕う若造なんて、かえって気持ち悪く思われるだろう*6。それよりも、「好きにして」と開き直ってもなお堂々として見せてしまったらいい。

私は老獪なビジネスパーソンの目を見つめながら、心の中でつぶやく。
「もしあなたが私を騙して一方的に利益をむさぼろうとするなら、私はそれでかまわない。それは私があなたという人間を見誤っただけなんだから。」

効くんだよ、これが。「ほう、なかなかおもしろい青年じゃないか」と、こうなる。実際にやるのは恐いけどね。胆力が要る。


ちなみに営業のほうの話は、これはこれでなかなかだったのだが、肝心の商品の問題やら何やらあったし、他にも内部でいろいろあって、辞めてしまった。そう言えば、ここでもリーダーに「みんな迷惑してんだよ!」って言われたなあ。試しに他の人に聞いたら、「いや、俺はおもしろいと思って見てるけど」とかいうほうが多かったように私は感じているんだけど。それにしても、何やってんだろうね、俺*7
でも、営業やらビジネスやらはおもしろいから、またそのうちやりたいとは思っている。

*1:もちろん、他の結末を選んだほうがいいケースもあるだろうけど。

*2:ひ、姫、口調まで変わってる?

*3:目の前に見えている相手に対して批判するわけだしね。私もid:ueyamakzkさんに対して同じ事をやってしまい、反省している。人のことばかりは言えない。

*4:姫の場合はこれを問う必要はなかったけどね。逆に、北朝鮮との交渉なんかは相手の良心を信じることができないから大変だ。

*5:俺は一体何をやってる人なのかねえ。

*6:そもそも、大学院理系休学中で営業やってる、といういかにも中途半端な私には、小手先のテクニックすらなかった。私は一般に正しいとされる名刺交換の仕方もしらない。

*7:昨日の繰り返しになるが、「結局てめえが全部悪かったんじゃねえの?」という批判は、甘んじて受けよう。