オマケ3 短い言い回しほど難しかったり。
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“No woman, no cry”って、受験生時代には「女がいなければ泣くこともない」と覚えた気がする。
姫の父君(王様?)がかつて「女よ、泣くな」と訳したそうで、これはジャマイカ英語独特の言い回しなんだって。「やめろ女よ、泣かないでくれ」って感じなのかなあ。わかんないや。僕は英語すら怪しいわけで。
僕はこれを読んでいて、ふと「全然いい」「全然OK」って言い回しを連想してしまった。共通点は呼応表現*1。“No woman, no cry”も、呼応表現として見たときと、わざと呼応を切り離して見たときの違いなのかな、というような気が一瞬したのだった(この考え方が間違ってる可能性は高いけど)。
もうこんなこと誰かが言ってると思うけど書いてみる。
一時期、「全然いい」「全然OK」という言葉使いに対して「そんな使い方間違ってる!」「呼応が間違ってる!」というような指摘をする人・学者がいっぱいいた。
この問題は、ごちゃごちゃとした議論の挙句、辞書に新しい意味が付け加えられることでひとまず決着がついたみたいだ。
ぜんぜん 0 【全然】
一(副)
(1)(打ち消し、または「だめ」のような否定的な語を下に伴って)一つ残らず。あらゆる点で。まるきり。全く。
「雪は―残っていない」「金は―ない」「―だめだ」
(2)あますところなく。ことごとく。全く。
「一体生徒が―悪るいです/坊っちゃん(漱石)」「母は―同意して/何処へ(白鳥)」
(3)〔話し言葉での俗な言い方〕非常に。とても。
「―いい」
二(ト/タル)[文]形動タリ
すべてにわたってそうであるさま。
「実に―たる改革を宣告せり/求安録(鑑三)」
<goo辞書より引用>
一の(3)「〔話し言葉での俗な言い方〕非常に。とても。」がそれだ。
僕はこれを見ると、一方で「えっ、そうなの?」っとびっくりしつつ、他方で「間違ってるって指摘した人や学者って物知り顔してるけど、もしかしたら相当バカかもしれない」と思ってしまう。僕が実際に使っているときの感覚と全然違うんだよね。
僕の個人的な感覚としては、「全然(ダメなんてことはなくて、)いい」というように、一の(1)の呼応表現の“応”を端折って結論を言っちゃう用法なんだよね。だから、端折ってはいるけど一の(1)に照らしても間違っているわけでは全然ない。
「全然いい」には、「揺らぎ」とか「振り子が振れる」ようなニュアンスが含まれているように思う。
例えば、「俺のこのアイデアどうかなあ」という相談に対して「全然いいよ」って答えた場合は、何というか、相手への気遣いみたいなニュアンスを感じる。「ダメじゃないよ、いいんだよ」という感じ。
車を運転してて「なんだよ、こっちの道の方が全然早く着くじゃん」という場合は、「こっちの道のほうが着く時間が早くないと思っていたけど早い」「あっちの道が最短だと思ってたけど、もっと早く着くルートがあったのか」みたいな。
これを「全然いい」=「とてもいい」とまとめてしまっていいのだろうか?
そんなわけで、僕はこの新しく辞書に付け加えられた意味を見ると、「ひょっとしたら俺の使い方が特殊なのかな?」と思いつつ、「もし俺の使い方が一般的だとしたら、言語学者*2ってのも相当アレだよね」とも思ってしまうわけだ。
実際のところは、どうなんだろ?