リスクと覚悟


「リスク」という言葉はよく使われるが、その概念を正しく知っている人はあまり多くない。


リスクとは「見積もられた不確実性」という意味で、標準偏差に対応する。

将来に起こると予測できる出来事の幅が大きいとき、例えば大成功もありうるが大失敗もありうる、というようなときは「リスクが大きい」と表現する。逆に、将来に起こると予測できる出来事の幅が大きいとき、例えば大成功もしないが大失敗もしない、というようなときは「リスクが小さい」と表現する。

注意すべきは、「見積もられなかった不確実性」を、リスクとは呼ばないこと。それから、リスクは定義上、それを見積もる主体が持っている情報収集力や予測能力に従って主観的に決められるものである、ということだ。


自分の言動の結果として予測できる出来事に関しては、前もって覚悟できる。だが、予測できなかった出来事に関して前もって覚悟することは、そんなに簡単ではないだろう。私も、ついつい「だってこんなことになるなんて思ってなかったもん!」と言いたくなってしまうことがよくある。
将来の見積もりが主観的なものである、ということは、自分にとっては想定外の出来事だったとしても、もっと情報収集力や予測能力の高い他の誰かには想定可能の出来事だった、ということがありうる。そういう場合、「この程度のリスクも想定できないのか」というふうに自分の能力を“外的に判断されてもしかたない”し、能力が疑われなくとも「これくらいは覚悟の上でやったくせに甘えたこと言うな」というふうに“外的に判断されてもしかたない”。


覚悟できていないようなことが起こることもある、ということを覚悟しておく他ない。「だって…」という言葉をぐっと飲み込まなければならない。ただ己の不明を悔い、授業料を払って勉強したと開き直ることだけが許される。