90°方向の効果とは?


ということで、「モテ」に関する情報汚染を少しは取り除くことができた(?)ところで、フラーに話がつながる。


実はフラーはこの「↑←」あるいは「↑→」の形で物事が起こることを、「90°方向の効果」と呼んだ。

ミツバチは、蜜を集めるために飛び回る。それはもちろん「自分または自分の仲間のために」集めているに過ぎない。しかし、ミツバチはそれをする過程で、「ついうっかり」植物の受粉に手を貸すことになる。

フラーはこの「ついうっかり」に対して、「90°方向の効果」と名付けたのだった。そしてこれはシナジー(相乗効果)の一つの形態である。


ミツバチは「ついうっかり」とは言え、植物の受粉に手を貸してしまった。もう少しよく考えてみよう。それは単に植物に手を貸しただけでなく、自らの来年の食料を保証する行動であるのがわかるだろう。

ミツバチが、来年の飯のために受粉に手を貸したのではない。しかし傍から見ていると、あたかも来年の自分自身のための合目的的行動にも見えてしまうではないか*1

このようなことをフラーは発見したのだった。


トレードを根本原理として、お互いにできるだけ効率を高めようとすると、必ず奪い合いになる。もし宇宙が効率的で、かつトレードを原理とするならば、宇宙は、地球は、生態系は、今のような豊かな姿にはなり得なかったはずだ。

シナジーを根本原理としているからこそ、自然は今の豊かな姿になりえたのだ、とフラーは考えていたに違いない*2


この話は、物理でいう「回転モーメント」や「プリセッション」の話に通ずる。


プリセッション(Precession)
http://www002.upp.so-net.ne.jp/a-cubed/aero-misc/precession.html


内田樹さんの日記(4月2日、3日)。
http://www.tatsuru.com/diary/2003/03.04.html
コマは「倒そうとする方向よりも回転方向90度先に倒れようとする」… 合気道における、回転運動している相手を動かそうとすると90°方向に倒れる動きについての話。おもしろくてわかりやすい。おすすめ。

*1:ほんとにそうだと考えたら非科学的になるんだけど。科学と非科学の違いは、「あたかも」という言葉にある。

*2:そしてこの思想は、その後の複雑系科学へと意識的・無意識的に受け継がれていったと思われる。